アース製薬がOOHでInstagram運用の裏側を披露──

SNS運用の「軌跡」をOOHで可視化したユニークな取り組み

アース製薬は2025年5月5日から11日にかけて、東京メトロ丸ノ内線新宿駅と新宿三丁目駅を結ぶ地下連絡通路「メトロプロムナード」にて、同社公式Instagramアカウントのこれまでの歩みを紹介するユニークなOOH広告を展開した。Instagram運用の”裏側”をストーリー形式で見せる構成とともに、来場者参加型の「ノーマットビンゴキャンペーン」も実施され、OOHとデジタルメディアを巧みに連携させた話題性の高いプロモーションとなった。

長尺ビジュアルに込められた「運用の軌跡」

本施策では、広告面全体を使い2022年から2025年にかけてのInstagram投稿内容を年表形式で構成。各年の象徴的な投稿をサムネイル付きで紹介し、運用中に直面した課題や試行錯誤の様子をコメントとともに伝える内容となっていた。特に注目されるのは、運用担当者の視点から語られる率直なエピソードである。

例えば2025年3月のセクションでは、新たに運用担当に就任した架空のキャラクター「須桐香(すきりかおる)」による投稿の変遷が紹介されている。商品とは一見関係のない個人的な投稿が続くが、実はすべての投稿に消臭芳香剤「スッキーリ」が隠れているという仕掛けが明かされており、企業の社会人ユーザーに向けたユーモア溢れる演出となっていた。

「剥がせる」ビンゴカードで参加体験を創出

さらに独創的だったのは、2025年3月のエピソード部分に配置された「ピールオフ型ビンゴカード」である。通行者は壁面から実際にカードを1枚ずつ剥がして持ち帰ることができ、約1,000枚が用意されていた。カード裏面のQRコードからビンゴキャンペーンに参加できる仕組みで、OOH上の広告が「持ち帰れるメディア」として機能する設計が印象的だった。

ビンゴカードには、アース製薬のInstagram投稿に登場したワードやキーワードがビンゴ形式で並んでおり、日替わりで公式Instagramアカウントにて発表される”ビンゴ番号”と照らし合わせてゲーム感覚で楽しめる構成となっていた。参加者はInstagramのDMを通じて応募し、ビンゴが成立した人の中から抽選で100名に豪華詰め合わせセットがプレゼントされるキャンペーンが実施された。

OOHを”メディア運用の舞台裏”に変える発想

このプロモーションの注目点は、企業のSNS運用における「成果」だけでなく、「過程」や「苦労」も含めてコンテンツとして公開した点にある。広告が単なる発信手段としてではなく、ブランドのパーソナリティや担当者の試行錯誤を伝える”ドキュメンタリー的な読み物”として機能している。

また、駅という日常空間に設置された大型OOHに、デジタル空間での「積み重ね」を一望できる構成を落とし込んだ点も新しい。Instagramフォロワーにとっては懐かしさを、非フォロワーにとっては興味や共感のきっかけを提供するような設計となっていた。

従来のOOHが一方向的な情報発信に留まりがちだった中で、本事例ではビンゴカードという「持ち帰れる要素」を通じてInstagramへの行動導線を設計している。通行者がOOHに接触し、カードを持ち帰り、その後Instagramでキャンペーンに参加するという一連の体験設計により、物理空間とデジタル空間の境界を越えた参加型プロモーションを実現していた。

この設計は、単にQRコードでデジタルに誘導するだけでなく、「剥がす」という物理的なアクションを挟むことで、より印象に残る体験を創出している点が巧妙である。また、日替わりのビンゴ番号発表により、一度の接触で終わらない継続的なエンゲージメントを促進している。

SNS上では実際に現地を訪れた人々による投稿が見られ、特にビンゴカードを手に取った様子やInstagram年表の詳細を撮影した画像が拡散された。企業のSNS運用を題材にしたメタ的な広告展開という珍しさも手伝い、広告業界関係者を中心に注目を集めた。

通行者の中には広告前で立ち止まり、年表を詳しく読み込む人々の姿も確認された。新宿という多くのビジネスパーソンが行き交う立地において、企業のデジタルマーケティングの舞台裏というテーマが適切にターゲットにリーチしていたことが伺える。

OOHの新たな可能性を示す事例として

本事例は、OOHが単なる認知獲得の手段を超え、ブランドのストーリーテリングやコミュニティ形成にも活用できることを示している。特に、企業のデジタルマーケティング活動自体をコンテンツ化し、それをリアル空間で展開するという発想は、今後のクロスメディア施策において参考になるアプローチと言えるだろう。

また、参加型要素を組み込むことで、従来の「見るだけ」のOOHから「体験する」OOHへの進化を実現している点も評価できる。デジタルネイティブな消費者にとって、物理とデジタルを行き来する体験設計は今後ますます重要になってくるはずだ。

アース製薬は過去にも「アース総選挙」など、時事ネタと自社商品を巧みに組み合わせたOOH展開で話題を集めてきた。今回の事例も含め、同社のOOH活用には「日常に違和感を作り出す」という一貫したフィロソフィーが感じられる。こうした継続的な取り組みが、ブランドの認知向上や好感度醸成に寄与していることは間違いないだろう。

広告情報まとめ

項目内容
広告主アース製薬株式会社
内容Instagram運用の年表展示+参加型ビンゴキャンペーン
時期2025年5月5日(月・祝)〜5月11日(日)
エリア東京メトロ丸ノ内線新宿駅〜新宿三丁目駅 メトロプロムナード
媒体東京メトロ新宿駅スーパープレミアムセット/ピールオフ式ビンゴカード(約1,000枚)

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