やめよう歩きスマホ、やろう歩き特茶。社会課題と商品訴求が交差する東京駅OOHジャック

2025年6月、JR東京駅構内にて展開されたOOHキャンペーンが話題を呼んでいる。
「やめましょう、歩きスマホ。」という啓発メッセージで知られる通信キャリア各社による注意喚起ポスター群と並列する形で登場したのは、サントリーの健康飲料「伊右衛門 特茶」による広告シリーズ。
ただのタイアップではない。これは「歩きスマホの代わりに歩き特茶を」という前向きな行動提案を加えた、社会課題×商品訴求の秀逸なコラボレーションである。

東京駅の乗り換え動線を活かした大型ジャック展開

実施エリアは、JR東京駅京葉線乗換地下通路一帯。JR構内でもとくに人通りが多く、通勤・観光問わず膨大な通行量がある場所である。
そこに出現したのは、黄色を基調にした目を引くグラフィック。「STOP: Texting While Walking.」という直球の注意喚起が、柱・壁・通路に連続して掲出され、歩きスマホの危険性を多言語で伝える内容となっていた。

否定から肯定へ。”やめよう”から”やろう”へ

今回のキャンペーンの真骨頂は、「やめましょう、歩きスマホ。」の真横に、「やりましょう、歩き特茶。」と対になるコピーを掲出した点にある。
これは啓発文脈の中で商品を押し出すのではなく、「では代わりに何をするか?」という選択肢を提示するコピー戦略であり、単なるタイアップにとどまらない深さがある。
英語では「BRING: Tokucha When Walking.」と訳され、外国人観光客への配慮も施されていた。

異業種連携の妙:キャリア6社×サントリー

啓発ポスターには、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル、ワイモバイル、UQモバイルという通信キャリア6社の名前が連ねられており、業界横断の連携によって生まれた信頼性が基盤にある。
そこにサントリーが”後乗せ”のような形で「特茶」広告を展開しているが、不自然さはまったく感じられない。
むしろ啓発メッセージの続編のようにスムーズに受け入れられ、公共性と商業性が見事に融合している。

新エビデンスとの連動で健康訴求を強化

2023年から展開している「特茶研究所」シリーズで「飲用開始から8週目以降に体脂肪の低減が認められた」というエビデンスを打ち出してきた特茶。
今回新たに発表された新エビデンスでは、飲用に加えて一定量の歩行を行うことで、より高い体脂肪減少効果が期待できることが示された。
この科学的根拠をもとに「歩き特茶」というコンセプトを提示し、歩きスマホ防止という社会課題とブランドメッセージを自然に融合させている。

OOH×社会課題×飲料=生活者の記憶に残る広告

「歩くこと」は日常的で、誰もが関係する行為だ。そして「歩きスマホ」は誰もが一度はしてしまう可能性のある危険行為。
そこに「歩きながら特茶を飲もう」という新しい行動提案を挟むことで、「やめる」だけでなく「始める」動機付けを提供している。
OOHというリアル空間の中で、”行動を変えるきっかけ”となる広告の本質を感じさせる事例である。

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