OOHの仕事をしていると、「で、それは誰が何人見ているんですか?」と聞かれます。テレビには視聴率があって、Web広告にはインプレッションがある。OOHにも各社が出している推計値はあるのですが、通行量をもとにした数字なのか、そこから視認率をかけて絞り込んだ数字なのか、端末が広告を再生した回数なのかが媒体社ごとに違います。同じ「インプレッション」という言葉でも中身が違うので、ほかの媒体と横並びで比べにくい課題があります。
海外はどうしているのだろうと気になって、米国と英国の公開資料をあたってみました。結論から書くと、既に媒体をまたいだ比較表が普通に出回っていて、その中でOOHはSNSとほぼ同じ価格帯に置かれています。
CPM比較表
Solomon Partnersという米国の投資銀行が、毎年「Major Media CPM Comparison」という資料を出しています。CPM(1,000インプレッション当たりの料金)でテレビ、ラジオ、デジタル、OOH、印刷を一枚に並べたもので、2025年版は米国のOOH業界団体OAAAのサイトにもPDFで掲載されています。

OOHの内訳は、大型看板(Bulletins)が3〜10ドル、ポスターが3〜9ドル、バス停シェルターが2〜7ドル、商業施設などに置かれたデジタルサイネージが7〜16ドル。デジタル化された面はポスターで最大13ドル、シェルターで8ドルまで上がります。OOH全体では2〜16ドルの範囲です。
同じ表で、地上波テレビのプライムタイムは45〜49ドル、ケーブルテレビのプライムタイムは21〜23ドル、広告付きの動画配信が23〜34ドル、新聞は40〜54ドル。デジタル系はディスプレイ広告が5〜6ドル、SNSが2〜8ドル、オンライン動画が11〜13ドルで、インフルエンサーだけは54〜196ドルと跳ね上がります。
OOHの2〜16ドルは、SNSの2〜8ドルとほぼ重なる位置です。テレビや新聞とは一桁違います。この資料は広告想起率も併載していて、静的・デジタルともOOHが全媒体で最も高いという結果になっています。安くて覚えられている、という並びをOOH業界側が示せる状態になっているわけです。
DOOHとプログラマティックの単価
デジタルに絞ると、OAAAが示すDOOHの平均CPMは6.41ドルです。配信プラットフォームのVistar Mediaは、プログラマティックDOOHのベンチマークを10〜22ドルとしていて、空港や駅のようなプレミアム立地はバス停などのストリートファニチャーの最大4倍になると説明しています。

ほかのDSPを見ると、StackAdaptは2〜15ドル、Growth Channelは2025年の平均を11.07ドルとしています(Blindspotのまとめによる)。ソースによって幅はありますが、だいたい一桁ドル台の後半から20ドル前後に収まります。
市場ごとの差も大きく、ニューヨークについてはAdQuickが、オープンオークションの在庫が5ドル前後、標準的なデジタルビルボードが6〜10ドル、マーキー枠やプログラマティック枠が15〜25ドル、タイムズスクエアの大型ビジョンは75ドル以上という整理を出しています。
注意したいのは、「プログラマティックDOOHは2〜5ドル」という安い数字だけが一人歩きしやすいことです。Broadsignの2026年のレポートによると、2025年のプログラマティックOOH取引の86%はPMP(プライベートマーケットプレイス)経由で、そのうち3分の2はカスタムPMPでした。オープンオークションは主流ではなく、実際に動いているのは買い手と売り手が条件を決めて取引する枠のほうです。単価もその分高めに出ます。
英国も見ておくと、プログラマティックDOOHは6〜25ポンドが目安とされています。英国の媒体社は公開の料金表を持たず、すべて見積もりベースだそうです。それでも2025年にはOOHキャンペーンの47%がプログラマティック経由になったという報告が出ています。
米国のOOHは、業界共通の物差しでインプレッションを数えている
ここまで調べていて気になったのは、なぜ米国ではこういう比較表が成立するのか、という点でした。日本で同じ表を作ろうとすると、最初の「OOHのインプレッションとは何か?」で壁に当たります。
米国のOOHは、Geopathという業界の計測機関が決めた定義でインプレッションを数えます。通行量(OTS=広告を見る機会)に、面の位置や向き、視認できる距離を踏まえた補正をかけた数字で、大型看板でもバス停でもデジタルサイネージでも同じ物差しです。性別や年齢の構成も同じ方法で推計されるので、「誰が」の部分も媒体をまたいで比べられます。テレビとラジオはNielsenが担当していて、こちらも媒体ごとに一つの基準があります。
だから買い手は「1,000人に届けるのにいくらかかるか?」を並べて見ることができて、その結果としてOOHがSNSと同じ価格帯の媒体として扱われている。Solomon Partnersの資料も、OOHの数値はDOmediaという取引プラットフォームに蓄積された実際の契約データから取っていると注記しています。推計だけでなく、実売の数字が業界の外から見える形で溜まっているということです。
日本の場合、現在、視認補正前の接触機会(OTC)を使う事業者もあれば、視認率で補正したVACを使う事業者もあり、タクシーのように端末の再生回数を出す媒体、調査で「見た」と答えた人の割合から逆算する交通広告もあります。同じ面でもOTCとVACでは分母が数倍変わるので、CPMの数字だけを見比べても安いのか高いのか判断できません。「誰が何人見ているのか分からない」と言われるのは、数字がないからではなく、数字の意味が揃っていないからではないかと思います。
日本のimp単価
国内の媒体資料に出ているDOOHのインプレッション単価も見ておきます。接触機会(OTC)を分母にしたインプレッション保証型で1インプレッション0.4〜0.5円、CPMにすると400〜500円。視認したと推定される回数を分母にした運用型で1,000〜1,500円。視認率で補正したVACを分母にした保証型では、出稿金額に応じて2.0〜5.0円、CPMで2,000〜5,000円といった例があります。

国内の3つを並べただけでも、同じ「1インプレッション」という言葉の中身が媒体によって違うことは見えてきます。OTCとVACでは分母が数倍変わるので、単価が安いほうが効率がいいとは限りません。
調べてみて思ったこと
数字そのものより、その数字が成り立つ仕組みのほうが印象に残りました。米国でOOHが「SNSと同じ価格帯で、テレビより一桁安く、いちばん覚えられている媒体」という位置に置かれているのは、Geopathという共通の物差しがあって、DOmediaに実際の取引が溜まっていて、Solomon Partnersのような第三者がそれを毎年並べているからです。三つが揃って初めて、上記の一枚の表ができあがります。
次の日本のOOHに必要なのは、たぶん値下げでも新しい推計モデルでもありません。「誰が何人見ているのか」への答えは、すでにそれぞれの媒体社が持っています。それを買い手が並べて読める形にすること。調べ終えて残ったのは、そのあたりが次の宿題なのだろうという感触でした。
参照元
- Solomon Partners「2025 Major Media CPM Comparison」(2025年6月・OAAA掲載PDF)
- Vistar Media「DOOH vs. CTV」(DOOH平均CPM 6.41ドルの出典)
- Blindspot「DOOH CPM Benchmarks」(StackAdapt・Growth Channel・英国の相場のまとめ)
- AdQuick「How Much Does a Billboard Cost?」(ニューヨーク市場の内訳)
- Broadsign「2026 Programmatic DOOH Trends Report」(PMP比率)
- Geopath(米国OOHの計測機関)/OAAA(米国屋外広告協会)/DOmedia(OOH取引プラットフォーム)
- 国内の単価は各媒体社が公開している媒体資料(2024〜2026年)より
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